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プリツカー賞の「未完成建築」におもう「空き家活用」とは

最近知った「未完成建築」という考え方は、空き家活用にも活かせるのではないかと思います。

この未完成建築とは、2016年のプリツカー賞を受賞したチリの建築家、アレハンドロ・アラヴェナが「逐次的デザイン」と呼ぶ、意図的に未完成の建物をつくる原始的な建築アプローチのことです

2010年2月にチリを襲ったマグニチュード8.8の地震の直後、アラヴェナはこの手法をもって、コンスティトゥシオンという町に集合住宅を建てました。

この集合住宅の各ユニットは文字通り「家屋の半分」、つまり家の半分は、入居者があとから自分でDIYなどで完成させていくというものです。

「災害時に建てられる仮設住宅は金の無駄だ」と、アラヴェナは公言しています。

将来的に廃棄される「仮設的」ではなく、短期間で建設でき、長期的に活用可能な「逐次的」な住宅を提案。

つまり住民自身が住みながら家を完成させる方式で、廃棄されることなく持続可能な住まいとなるのです。

近年、日本では空き家問題が深刻化しており、適切な活用方法が求められています。
そこで、アレハンドロ・アラヴェナがこの空き家問題に取り組んだとしたら、どのような解決策を提示するのでしょうか?

彼の設計哲学や過去のプロジェクトを参考にしながら、空き家活用の新たな可能性を探ってみます。

1. アレハンドロ・アラヴェナとは?
アレハンドロ・アラヴェナはチリ出身の建築家で、社会問題を解決する建築デザインで知られています。
彼の代表作のひとつに、チリの「エレメンタル住宅プロジェクト」があります。
これは、低所得者層向けの住宅を最小限のコストで提供し、住民自身が増築や改修を行うことで機能を拡張できる仕組みのことです。
こうした柔軟な設計は、日本の空き家活用にも応用できると考えています。

2. 空き家問題とその課題
日本の空き家活用が進まない理由には、長い間の新築信仰があると思います。
大規模にリフォームするより、住宅ローンを使って新しく建てたほうが安いし、税金面などで優遇される、といったこともありました。
また、所有者不明問題や、相続トラブル、改修コストの高さ、そして適切な活用方法の情報不足などが挙げられます。

3. アラヴェナ流・空き家活用の可能性
アラヴェナの「オープンシステム」思想を取り入れ、住民が主体となって空き家を改修できる仕組みを作ることができれば、地方の空き家問題も一気に好循環になると思います。
例えば、基本的な改修のみを行い、後は住民が自由に改装できるようなプログラム、いわゆる「ハーフ・ホーム」や「ハーフ・ビルド」、「セルフビルド」といった手法が考えられます。
エレメンタル住宅と同様に、空き家を「半分完成」した状態と仮定すれば、あとは住民が必要な部分だけ手を加えることで、初期コストを抑えつつ、空き家の利活用が進む可能性があります。
この考え方は、空き家を個人の住居としてだけでなく、地域コミュニティの拠点として活用する方法としても有効です。
例えば、カフェやコワーキングスペース、地域のイベントスペースなどとして使えるように「未完成の状態」で募集することで、人が集まりやすい場を創出するハードルも下がります。

4. 実現に向けた課題と展望
日本の現行制度では、空き家の改修にはさまざまな法的制約が伴います。
例えば、だいぶハードルが下がったとはいえ、用途変更には行政の許可が必要ですし、建築基準法の適用も課題となります。
まずはこれらの制度を柔軟にするための政策変更が求められます。
そして、アラヴェナ流の空き家活用モデルを試験的に導入することで、その実現可能性を検証できます。
例えば、自治体と連携し、モデル地区を設定してまずは試験運用を行うことが考えられます。

まずは、老朽化などで募集をやめた公営住宅などから始めてみると、思わぬ効果があると思いますがいかがでしょうか。